中小企業診断士 過去問
令和7年度(2025年)
問80 (企業経営理論 問29(2))

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問題

中小企業診断士試験 令和7年度(2025年) 問80(企業経営理論 問29(2)) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

食品メーカーA社は、これまで国内市場でさまざまな食品を製造・販売してきたが、今後の経営計画として国外への輸出、その他の方法による海外進出を視野に入れている。このため、同社ではグローバル・マーケティングについて、検討を開始した。

文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 海外の国や地域に進出して間もない時期は、参入モードとして完全所有子会社による現地生産を採用することが必要であるが、現地でのビジネスが軌道に乗るにつれて、次第に直接・間接輸出に転換していく。
  • 極めて重要な経営資源である知識には、形式知と暗黙知がある。前者はマニュアルとして明文化したり図示したりすることにより国際移転が可能であるが、後者については移転できない。
  • 参入モードの1つであるフランチャイズでは、母国の本社がフランチャイジーとして研究開発・マーケティング・生産を行い、進出先のフランチャイザーは販売とサービスを担当する場合が多い。
  • 製品やサービスを進出先の国や地域に合わせる適応化戦略は、標準化戦略より自社にとって高コストであるが、進出先における最終顧客の満足度は高い場合が多い。
  • 輸出マーケティングでは、当初は自社の製品やサービスを直接海外に輸出していた企業が、取扱量が増えるに従いリスク回避などの目的で商社などの輸出代行業を介して間接輸出を行うようになる。

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この過去問の解説 (2件)

01

グローバル・マーケティングに関する問題です。

 

本問の選択肢5つを見て、フランチャイ「ザー」と「ジー」の引っ掛け問題や、海外進出の度合いで前後の文章を入れ替える問題であることを見抜くことができれば、ほぼ選択肢が1つに絞り込まれます。

選択肢1. 海外の国や地域に進出して間もない時期は、参入モードとして完全所有子会社による現地生産を採用することが必要であるが、現地でのビジネスが軌道に乗るにつれて、次第に直接・間接輸出に転換していく。

本選択肢は、海外進出のフェーズが逆のため不適切な選択肢となります。

 

正しくは、海外の国や地域に進出して間もない時期は、参入モードとして直接・間接輸出を採用することが必要であるが、現地でのビジネスが軌道に乗るにつれて、次第に完全所有子会社による現地生産の採用に転換していきます。

選択肢2. 極めて重要な経営資源である知識には、形式知と暗黙知がある。前者はマニュアルとして明文化したり図示したりすることにより国際移転が可能であるが、後者については移転できない。

暗黙知が国際移転できないとは言い切れないため、不適切な選択肢となります。

 

暗黙知とは、個人の経験や勘、直感に基づいた形式知化(言語化・文章化)が難しい知識やノウハウのことです。本問はグローバル・マーケティングの論点であるため、日本国内と比較して相対的に暗黙知の移転が難しいことが考えられます。(各自が持つ生活背景、言語、習慣などの違いが大きいことが、理由として考えられます。)

 

※トヨタが海外生産を始めた際、日本国内では通用していた暗黙知の移転(共有)が、現地の従業員にはなかなか理解されなかったことがあります。これは、同一進出国内でも様々な人種や宗教が存在することに加えて、日本人の同質性の高さとのギャップが大きかったことが考えられます。

選択肢3. 参入モードの1つであるフランチャイズでは、母国の本社がフランチャイジーとして研究開発・マーケティング・生産を行い、進出先のフランチャイザーは販売とサービスを担当する場合が多い。

参入モードの1つであるフランチャイズでは、母国の本社がフランチャイザー(Franchisor)として研究開発・マーケティング・生産を行い、進出先のフランチャイジー(Franchisee)は販売とサービスを担当する場合が多いため不適切な選択肢となります。

 

※本選択肢は、冒頭の解説で述べたフランチャイ「ザー」と「ジー」の典型的な引っ掛け問題です。

 

フランチャイ「ザー」と「ジー」の見極めですが、一般的には

フランチャイザー(Franchisor)→フランチャイズ本部

フランチャイジー(Franchisee)→フランチャイズ加盟店

となります。

 

法的には両者は独立した対等な関係ですが、加盟店側がロイヤルティを支払って本部から様々な便益を提供してもらっているため、力関係は「本部>加盟店」となります。

 

そこから、企業での使用者>従業員(Employee)の関係に置き換えて考えてみます。フランチャイジーと従業員の英単語の語尾が「-ee」で共通しており、力関係が弱い方がフランチャイジーであると覚えておくことで、本選択肢の引っ掛け問題に正しく対応できるようになります。(「ジー」が加盟店と覚えておくだけで十分です。両方をしっかり覚えようとすると、却って混乱してしまいます)

選択肢4. 製品やサービスを進出先の国や地域に合わせる適応化戦略は、標準化戦略より自社にとって高コストであるが、進出先における最終顧客の満足度は高い場合が多い。

本選択肢は、前問の解説のまとめで述べている「IRフレームワーク」の適応化(ローカライズ)戦略の知識を問うものです。

 

適応化戦略は製品やサービスを進出先の国や地域のテイスト(嗜好)に合わせるため、進出先における消費者の満足度は高くなる場合が多いですが、本国の製品やサービスをそのまま持ち込む標準化戦略よりコストが高くなるため正解の選択肢となります。

 

選択肢5. 輸出マーケティングでは、当初は自社の製品やサービスを直接海外に輸出していた企業が、取扱量が増えるに従いリスク回避などの目的で商社などの輸出代行業を介して間接輸出を行うようになる。

本選択肢は、直接輸出と間接輸出の順番が逆のため不適切な選択肢となります。前問の、輸出(直接・間接)を更に細分化した内容になります。

 

正しくは、輸出マーケティングでは、当初はリスク回避などの目的で商社などの輸出代行業を介して間接輸出を行なっていた企業が、取扱量が増えるに従い自社の製品やサービスを直接海外に輸出するようになります。

まとめ

【補足】

 

消費者ニーズの多様化に伴い、日本国内でも全国展開しているコンビニやチェーンストアでローカライズ戦略が一部採用されています。

 

例えば、標準化戦略の典型的な例は全国展開しているコンビニやチェーンストア(イオンなどの食品系スーパー、吉野家などの定食屋チェーン)です。どの地域に行っても同じ商品が提供されています。

 

対して、特定の地域にしかない品揃えをすることがローカライズ戦略です。出張に行った際に地域限定商品があると「せっかく来たのだから」とつい買ってしまうことがあるように、製品やサービスを地域のテイスト(嗜好)に合わせると消費者の満足度は高くなります。

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02

企業が国境を越えて事業を展開する際の参入モード(進出形態)および戦略的適合性に関する問題です。

グローバル市場への進出には、単なる地理的拡大だけでなく、生産・マーケティングの効率性を追求する標準化と、現地ニーズへの合致を優先する適応化のトレードオフをいかに管理するかという高度な戦略的判断が求められます。また、企業固有の競争優位の源泉となる知識を、物理的・文化的な距離を越えていかに移転・定着させるかも重要な論点となります。

選択肢1. 海外の国や地域に進出して間もない時期は、参入モードとして完全所有子会社による現地生産を採用することが必要であるが、現地でのビジネスが軌道に乗るにつれて、次第に直接・間接輸出に転換していく。

不適切
一般的な国際化のプロセスでは、当初はリスクを抑えるために輸出から開始し、市場の理解が進み事業が拡大するにつれて現地生産(子会社設立)などの投資を伴う形態へと段階的に移行します。進出初期に最も高リスクな完全所有子会社を必須とし、後に輸出に転換するという記述は順序が逆であり不適切です。

選択肢2. 極めて重要な経営資源である知識には、形式知と暗黙知がある。前者はマニュアルとして明文化したり図示したりすることにより国際移転が可能であるが、後者については移転できない。

不適切
経験や勘に基づく暗黙知は、形式知(マニュアル等)に比べれば移転の難易度は高いものの、人的交流や共同作業を通じた経験の共有によって移転することが可能です。移転そのものができないとする記述は誤りです。

選択肢3. 参入モードの1つであるフランチャイズでは、母国の本社がフランチャイジーとして研究開発・マーケティング・生産を行い、進出先のフランチャイザーは販売とサービスを担当する場合が多い。

不適切
フランチャイズ契約において、ブランドやノウハウを提供する側の本部をフランチャイザー、それを受けて現地で事業を行う側をフランチャイジーと呼びます。用語の定義が逆転しているため不適切です。

 

フランチャイズにおける、フランチャイ「ザー」、フランチャイ「ジー」は混同しやすいので、「ズゼゾ」の50音順で上に来るのが本部側、下になるのが実施者と覚えましょう。

選択肢4. 製品やサービスを進出先の国や地域に合わせる適応化戦略は、標準化戦略より自社にとって高コストであるが、進出先における最終顧客の満足度は高い場合が多い。

適切
現地の文化、嗜好、法規制に合わせて製品仕様や販促手法を変更する適応化戦略は、開発費や生産コストを増大させますが、現地の顧客満足を最大化し、市場浸透を容易にする効果があります。これはグローバル・マーケティングにおける基本的なトレードオフの関係を示しており、適切です。

選択肢5. 輸出マーケティングでは、当初は自社の製品やサービスを直接海外に輸出していた企業が、取扱量が増えるに従いリスク回避などの目的で商社などの輸出代行業を介して間接輸出を行うようになる。

不適切
通常は、まずノウハウを持つ商社等を利用する間接輸出から始め、取扱量が増えて自社に知見が蓄積されるにつれて、マージン削減や直接的な顧客接点の確保を目的に直接輸出へと切り替わっていくのが一般的です。

まとめ

グローバルマーケティングは実務上、以下の3つの視点が不可欠です。
・戦略的適応コスト意識:適応化は顧客満足度を高める強力な武器となりますが、同時に規模の経済を損なう要因ともなります。そのため、変えるべき部分と変えない部分の切り分けが、収益性と市場シェアを両立させる鍵となります。
・参入モードのリスク管理:輸出から直接投資に至る進出形態の選択は、経営資源の投入量とコントロール権のトレードオフです。不確実性の高い初期段階では低リスクな形態を選び、学習曲線を描きながら徐々にコミットメントを高めていく段階的アプローチが合理的です。
・ナレッジ・トランスファーの深化:グローバル競争優位を維持するためには、マニュアルに留まらず、現地の文脈を理解した上での暗黙知の共有を促進する組織的な仕組みが必要です。

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